「太っていることで健康を害しているのではないか、、なんだか心配で、、」 飼い主様から寄せられるダイエットのご相談で、このような不安を口にされる方が多くおられます。 太っていることは愛犬の体に負担をかけ、次のような病気の原因になると言われています。
肥満が及ぼす悪影響
- 高血圧
- 心臓病
- 糖尿病
- 関節炎
このように肥満は重大な病気の引き金となる可能性があるため、適正体重を維持することが病気のリスクを抑え、ひいては寿命を伸ばすことにもつながっていくと考えられています。
今回はまず、BCS(ボディ・コンディション・スコア)を用いて肥満度チェックを行い、どのくらい減量が必要なのかを考え目標となる体重設定を行います。さらに、具体的なダイエット方法についてもみていきましょう。
愛犬の理想体型を知る
まず、愛犬が太っているのかどうか、さらにどのくらい理想体型とかけ離れているのかを確認する作業から始めましょう。
犬の肥満度チェックにはボディ・コンディション・スコア(BCS)がよく用いられます。
まず、愛犬を真上から覗き、肋骨部分を触ってみます。わずかに肋骨を感じることができれば理想的な体重に近いと考えられます。そのまま腰の部分まで手をスライドさせ「くびれ」を確認します。脂肪の上から骨格を感じられるか確認しましょう。
また今度は、真横から腹部のへこみを観察します。
BCS | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
やせすぎ | やせ気味 | 理想体重 | 太り気味 | 太りすぎ | |
体脂肪率(%) | ≦5 | 6~14 | 15~24 | 25~34 | 35≦ |
肋骨 | 脂肪がなく骨格が 浮き出ている |
脂肪はわずかで 骨格が浮き出ている |
薄い脂肪に覆われ、 なだらかな輪郭をしており、 骨格は触ることができる |
やや厚みがあり、 骨格はかろうじて 触ることができる |
厚みがあり、 骨格を触ることは 非常に難しい |
状態 | 横から見ると 腹部のへこみは深く、上から見ると極端な 砂時計型をしている |
横から見ると 腹部のへこみがあり、 上から見ると顕著な 砂時計型をしている |
横から見ると 腹部にへこみがあり、 上から見ると腰に 適度なくびれがある |
横から見た腹部のへこみや、 上から見た腰のくびれは ほとんどなく、背面は わずかに横に広がっている |
腹部は張り出して たれさがり、上から見た 腰のくびれはなく 背面は顕著に広がっている |
BCS表の真ん中、3が理想的な体型です。
次の手順で肥満度をチェックしましょう。
1)愛犬を真上から覗き、肋骨部分を触ります。2)そのまま腰の部分まで手をスライドさせ「くびれ」を確認します。
3)真横から腹部のへこみを観察します。
いかがでしょうか。肋骨、腰部の骨格に触れない、腹部にほとんどまたは全くへこみがない場合は肥満(BCS表4〜5)であると考えられます。
減量目標の立て方
犬は一般的に適正体重の15%以上になると肥満と言われています。
例えば、適正体重5kgのワンちゃんが5.75kg以上に体重が増えるとダイエットが必要になってきます。
それでは、先のBCS表で4〜5に当てはまる場合、どのくらい減量すれば良いのでしょうか。
BCSによる理想体重の評価 | |
---|---|
BCS3(理想体重) | 95〜106% |
BCS4(体重過剰) | 107〜122% |
BCS5(肥満) | 123%〜 |
たとえばBCS5と評価した場合、理想体重より20%程度太っていると考えられます。よって、現在の体重がたとえば10kg、BCS5の愛犬の理想体重は下記のように求めます。
BCS5現体重10kgの愛犬の理想体重の想定方法(簡易版)
10÷1.23= 8.13kg
また、適正体重の目安は1歳の頃の体重といわれています。当時の体重が分からない場合は、犬種によって適正体重がありますが、
個体差がありますので、かかりつけの獣医師に理想体重を相談してみるのもよいでしょう。
減量目標設定の注意点として、減量目標はkgではなく体重のパーセンテージで捉え直すことも必要です。
最初の例の5.75kgのワンちゃんが750g減量して5kgになったとします。たった750gと思うかもしれませんが、57.5kgの人間が50kgになったと思えばどうでしょう?どちらも15%の減量をしているのですが、体重の少ない犬にとっては大きな違いなのです。ですから、何kg減った、または太ったと考えると現状を正しく認識できません。犬の体重管理は何%減った、または増えたと考えるようにしましょう。
代表的な犬種の標準体重の目安 | |
---|---|
チワワ | 1〜2.5kg |
ヨークシャーテリア | 2〜3.5kg |
シー・ズー | 4〜7kg |
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル | 6〜10kg |
ウエストハイランド・ホワイトテリア | 6.5〜9kg |
フレンチブルドッグ | 9〜14.5kg |
イングリッシュ・コッカー・スパニエル | 11〜15kg |
ゴールデン・レトリーバー | 27〜37kg |
ラブラドール・レトリーバー | 27〜40kg |
※個体差があるため、全ての犬にあてはまるわけではありません。
ロイヤルカナン「Encyclopedia of Canine Clinical Nutrition ―犬の臨床栄養―」 より
ここまでのまとめ
- BCSを使って理想体型、体重との差を確認し、減量目標を決める。
肥満の原因とダイエット方法
重度の肥満であっても20%の減量を行うことで肥満による高度疾患のリスクを取り除くことができると言われています。大幅な減量が必要な場合でも当初の減量目標を10%減量に設定し、愛犬の様子を見ながら1週間で1%程度の減量を目安に3〜4ヶ月かけてゆっくり適正体重に近づけていきましょう。
次に具体的なダイエット方法をご紹介します。犬のダイエットは、基本的に食事管理と運動で行います。 急激な減量は犬にストレスを与えるだけでなく、体調不良の原因にもなりかねません。あせらず、時間をかけてゆっくり進めていくことが大切です。
ドッグフードの量を見直す
肥満は、とり入れたエネルギーと使ったエネルギーのアンバランスによって起こります。
食べ過ぎると、とり入れたエネルギーが多くなり、運動不足だと、使うエネルギーが少なくなってしまいます。
一般的に犬は食事を与えれば与えただけ食べてしまう習性があり、肥満になりやすいとも言われています。
つまり、ダイエット成功には飼い主さんの管理が重要ということです。それでは、あなたの愛犬に最適なフード量を計算してみましょう。まず、次の計算式で1日に必要なカロリーを計算します。
1日に必要なカロリー計算
- RER(安静時のエネルギー要求量) = 30×体重(kg)+70
- DER(1日当たりのエネルギー要求量) = RER×係数
たとえば理想体重10kg(現在の体重ではないことに注意してください!)ですと、安静時のエネルギー要求量(RER)は
RER: 30 × 10kg(理想体重) + 70 = 370kcal
となります。
さらに、そのライフステージと活動量から1日当たりのエネルギー要求量(DER)を求めます。 DERを求める計算式は、RER×係数です。係数は図1の表から肥満傾向の1.4(または1.0)を使います。
DER: 370kcal × 1.4(肥満傾向の係数) = 518kcal
エネルギー要求量の注意点
求めたエネルギー量はあくまでも推定値です。ひとまず計算で出てきた数字で給与し、犬が太ってくるようなら減らし、逆に急激な体重減少が見られるようであれば増やすようにしてください。愛犬の体型や筋肉の付き具合を日々観察しながら係数1.0〜1.4の間で調整しましょう。
【図1】
犬のDER | |
---|---|
去勢・避妊していない成犬 | 1.8×RER |
去勢・避妊済みの成犬 | 1.6×RER |
肥満傾向 | 1.4×RER |
減量中 | 1.0×RER |
高齢 | 1.4×RER |
妊娠中 1〜4週 5〜6週 7〜8週 |
2.0×RER 2.5×RER 3.0×RER |
授乳中 | 4.8×RER |
成長期 4ヶ月未満 4〜9ヶ月 10〜12ヶ月 |
3.0×RER 2.5×RER 2.0×RER |
理想体重10kgのワンちゃんの場合、1日あたりのエネルギーは518kcalが目安。(ドッグフード、おやつなど含めて1日に摂取するカロリーです。)
フード量の計算
たとえば、350kcal/100gのドライフードのみを与えている場合、次の方法で給与量を計算できます。
1日の給与量:518(DER)÷350(100g当たりのカロリー)×100=148g
給与時の工夫
フードを減らす場合、一度に減らすのではなく、少しずつ減らしてあげてください。
また、1日に与える回数を増やしてあげるのも、食事を減らす事による、犬のストレス軽減に効果的です。
おやつ1回の量を減らしてみる
普段の食事は適正量でもおやつをあげすぎているケースが多くあります。
飼い主さんご本人は少ししか与えていないと思っていても家族が与えているケースもあり、意外におやつでカロリーオーバーしているものです。
犬は1回の量よりも回数を増やすことで満足します。おやつを与えることを我慢するのではなく、まず1回の量を減らすことから始めてみましょう。
ここまでのまとめ
・設定した目標に向けて、1週間で1%程度の減量を目安に3〜4ヶ月かけて適正体重に近づけていく。
・フードを減らす場合は少しずつ減らす。与える回数を増やすと犬のストレス軽減につながる。
・算出したフード量はあくまで目安であり、愛犬の体型や体重を日々観察しながら調整する。
・家族がおやつを与えているケースが意外と多いので注意が必要。
ダイエット用フードに変える
市販されているダイエット用フードに切り替えるのも良いでしょう。
ダイエット用フードの多くはカロリーの高い脂質を抑え、タンパク質の含有量を多くするなどの調整が行われています。摂取カロリーを制限した場合でも必要なビタミンやミネラル、タンパク質などは十分摂取できるよう工夫されているのが特長です。
切り替える際の注意点として、今までのフードに少しずつ混ぜていき、ゆっくりと切り替えてを行いましょう。下記記事も参考にしてください。
ドッグフードの切り替え。注意ポイントのまとめ。
また、人間の食べ物を与えてしまっていませんか?健康に良くないのは勿論、慣れてしまうと、ドッグフードを食べなくなる原因にもなりかねません。
将来、療法食が必要になる場合も考えられるため、これを機会に人間の食べ物を与える事はやめましょう。
散歩に行きましょう
食事で取り入れたエネルギーを使わなければ体に脂肪となって蓄積していきます。また運動しなければ筋肉も細り、ますます痩せにくい体になってしまいます。このあたりは人間のダイエットと同じです。しかしながら犬のダイエットは運動より食事管理が中心となります。理由として、飼い主にとって運動より食事の方が管理しやすいことや骨格や関節、心臓などに過度な負担がかかることによる障害のリスクなどが挙げられます。特に筋・骨格系の疾患のリスクがもともと高い犬種は必要以上の無理な運動は避けるべきでしょう。
筋・骨格系の疾患のリスクの高い犬種
- トイプードル
- チワワ
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
健康のためのダイエットで病気になっては大変です。 とはいえ、まったく運動しないのも問題です。愛犬の様子を観察しながら、今までの運動量(散歩量)を維持し、様子を見ながら増やすようにしましょう。
注意!ダイエットを行うのは健康な愛犬のみにしてください。
成長期の子犬、高齢犬、何らかの病気がある犬はダイエットを開始する前に動物病院で健康診断を受けてください。
時に厳しく接する(しつけ)も必要です。
肥満は心臓や関節の負担を増やし病気のリスクを高めます。これは犬も人間も全く同じです。違う点は、太るのは犬でも犬を太らせているのは飼い主さんだということです。ですからまず「犬は少しくらい太っていた方が可愛い」を優先するのか、「長く一緒にいる」方を選ぶのか優先順位をつけることも必要なのかもしれません。そして、その判断によってはワンちゃんに厳しく接することになると思います。
愛犬のダイエットでお悩みであれば、お気軽に当サービスにご相談ください。アドバイザーが直接状況をお伺いいたします。
重度の肥満の場合は、獣医師指導の下ダイエットを行うことをお勧めします。
ダイエットのご相談を受付けています
愛犬・愛猫の適切なカロリー量の計算など、アドバイザーに直接ダイエットに関してのご相談をいただけます。次のことをあらかじめご確認ください。
- 犬種、年齢、性別、体重、去勢・避妊手術の有無、性格
- 使用しているフード名・おやつ
- 1日のフードの量と与え方
- 使っている薬またはサプリメント等
- これまでに試したこと
- 獣医師の診断の有無
- 飼育環境(室内or屋外、冷暖房、留守番の時間など)
- 散歩状況