猫は犬と違って、自由採食(いつでも自由に食べる事ができる給餌方法)でも問題がなく、食事提供時に食べないことも少なくありません。今回は、猫の食欲不振が生じる主な原因と、原因別の適切な対処方法について、わかりやすく解説します。
食欲不振と併せて普段と違う様子(嘔吐・下痢・元気がない・水も飲まない等)が見られる際には、緊急を要するケースも考えられます。動物病院の受診を強くお勧めします。
猫の食欲は一定ではなく個体差が大きい
猫には、食べたい時に食べたいだけの分量を取る習性があり、食べ方にムラが生じることがあります。ご飯を出した時にすぐに食べない、あるいは少量しか食べなくても、1日単位で必要な分量を食べていれば、病気や体調不良の心配はないケースが大半です。
また、猫の食欲はたいへん個体差が大きいことが知られています。品種や体の大きさ、生活スタイルなどの要因によって、食べる量に大きな差があります。とはいえ、以前の食事量と比べると明らかに量が少ない、または全く食べないようであればその原因を探る必要があります。
猫がご飯を食べない主な4つの原因
猫がご飯を食べない、食欲がない原因は、以下の4つに大別されます。
1.食事内容
2.病気
3.ストレス
4.加齢
食欲不振の原因を判断するポイントと、割合(当サイトに寄せられたご相談2,559件のうち、愛猫の食欲不振に関するものを分類集計:2023年8月現在)は、下表の通りです。
原因 | 判断のポイント | 割合 |
---|---|---|
食事内容 |
普段と変わらず元気はあるが、次のような状態である。
|
55% |
病気 |
|
25% |
ストレス |
次のような環境の変化があった。
|
15% |
加齢 |
|
5% |
4つの原因別の対処方法を、以下にご紹介します。
食事内容が原因でご飯を食べない場合の対処方法
4つの原因の中で、最も多いのは食事内容に関するものです。もともと猫は食べムラが多く、一度に食べてしまわずに、少量ずつ好きな時に食べることも多く見られます。一定期間、様子を見守ってみましょう。
普段の様子と変わらずに元気があって、以下の状態が見られるケースは、食事内容が原因だと考えられます。
・フードは食べないがおやつは普段通り食べる。
・フードを切り替えた直後から食欲が減退した。
但し、食欲不振が問題ないとされる時間を超えて続いている場合は一度動物病院を受診されることをお勧めします。 →ご飯を食べない猫。何日まで大丈夫?食欲不振と病気
ご飯を食べない原因が食事内容に関連する事柄だと考えられるケースでは、以下の対処方法を試してみましょう。
1.フードの酸化を確認
猫は人の6倍もの嗅覚センサーを持っていて、食物の匂いによって食べるかどうかを判断すると言われています。その一方、味覚センサーは人の12分の1程度にとどまります。
好んでご飯を食べるかどうかを、猫は主に匂いによって決めています。急にフードを食べなくなった時には、まずフードの匂いの酸化(酸化)を疑いましょう。
油脂などでコーティングされたフードは、空気に触れることで酸化が進み、匂いが劣化してしまいます。開封前の新しいフードを試して、食べ方が改善するかどうかを確認しましょう。
2.フードの匂いに変化をつける
酸化していない新しいフードでも食べない場合、食べ飽きが考えられます。フードの匂いを強め、食事に変化をつけることで、食欲不振の改善が期待できます。電子レンジを使用してフードを人肌(37~38℃)程度に温めることで、匂いが強まって嗜好性が高まります。油脂や嗜好性物質でコーティングしていないキャットフードは、匂いが弱めな製品もあります。そうしたフードは温めることでフードの匂いを強めることで食欲増進が期待できます。
また、ドライフードよりウェットフードの方が一般的に匂いが強く、嗜好性が高いものが多いので、ウェットフードを現在のドライフードに混ぜる、またはウェットフードを含めた新しいフードへの切り替えを検討するのも対策としては有効です。
2,000件以上の愛猫の食欲不振に関するご相談の声から生まれた「ふりかけ」
食欲を呼び覚ます鹿肉の「におい」
当サイト「ネイチャーライフ」には愛犬・愛猫がご飯を食べてくれないというご相談が、毎日のように寄せられています。その数は2,559件に上ります(2023年8月現在)。 ペットの食のプロである私たちは、毎日飼主様と悩みを共有する中で、愛犬や愛猫にストレスを与えることなく、食欲を改善する方法を追求してきました。そして「体によいもの」を毎日喜んで食べてもらえ、飼主様の負担にならない 手軽さというコンセプトを追求し、フードにトッピングする「太古の記憶 甦れ食欲!ふりかけタイプ」を開発しました。国内野生鹿を原料とし、特殊な乾燥技術を採用して旨味や風味を損なうことなく、商品化を実現。袋を開けた瞬間にふわりと香る鹿肉の匂いが、愛犬・愛猫の食欲を刺激します。
キャットフードのニオイが原因?猫がご飯を食べない時は
3.フードの切り替えを適切に行う
新しいフードへ切り替える際に、一度に変えてしまうとご飯を食べない原因になる可能性があります。切り替え時には、従来のフードに新しいフードを少しずつ混ぜて与えることをお勧めします。初日は新しいフードを1割ほど混ぜ、翌日は2割に増やすといったように、猫の様子を確認しながら、1週間~10日程度の期間をかけ、段階的に切り替えます。
適切な切り替えを行っても食欲不振が見られる場合には、前項で示したフードの匂いを強くする方法を試してみましょう。
4.おやつの与え過ぎに注意する
おやつを与え過ぎていることが、フードを食べない原因になるケースもあります。おやつは適量にすることを心がけましょう。
病気が原因でご飯を食べない場合の対処方法
病気による食欲不振は、最も注意が必要な原因です。食欲不振と併せて、普段と違う様子が見られる時には、できるだけ早く動物病院の受診をおすすめします。
食欲不振と同時に出ることが多い症状には、以下のものがあります。
- 元気がない・ぐったりしている
- 嘔吐
- 下痢
- 発熱
- くしゃみ
- 痙攣
猫の様子がいつもと違うことに気付いたら、早めに動物病院を受診して獣医に相談しましょう。
食欲不振が生じる主な病気には、消化器系や肝臓、腎臓などの病変・不調などがあります。ウイルス感染症も食欲不振につながります。また、口内炎や加齢による歯周病が進行した場合にも、口の中の痛みによってご飯が食べられないことがあります。 ご飯を食べないこと以外に、普段と変わった様子や症状が見られなければ、食事内容が原因である可能性が高いと考えられます。ただし、ご飯を食べなくなってからの期間が様子を見ても大丈夫とされる目安を超えた場合は、動物病院への相談をお勧めします。
食欲不振の様子見可能な期間は、猫の月齢・年齢によって異なります。下表をご参照ください。
猫の月齢/年齢 | 様子見可能な時間 |
---|---|
1~2ヶ月齢 | 8時間以内 |
2~3ヶ月齢 | 12時間以内 |
3~4ヶ月齢 | 16時間以内 |
1歳以上 | 24時間以内(1日) |
ご飯を食べない猫。何日まで大丈夫?原因別対処法
ストレスが原因でご飯を食べない場合の対処方法
猫はストレスによってご飯を食べなくなることがあります。猫の性格や生活環境によって、ストレスを感じる原因は多種多様です。猫にとって、ストレスとなる代表的な事例には、以下のようなものが挙げられます。
・ペットホテルに預けた。
・引越しした。
・留守番をさせる回数や時間が増えた。
・子猫や新しい家族を迎えた。
環境の変化は、猫の食欲に影響を与えるストレスの原因になりやすいものです。生活環境の変化による食欲不振が考えられる際には、しばらくご飯を置いたままにして様子を見るようにしましょう。また、猫がリラックスできる環境を整えることが重要です。ペットホテルに預ける時や引越しをする時には、普段から猫が愛用している毛布やおもちゃを用意すると、ストレス軽減効果が期待できます。食事だけでなく、トイレや睡眠など、猫の生活全般でストレスにならない安心できる環境作りを行う必要があります。
また、猫はもともと単独行動を好む性質がありますが、最近は猫の分離不安が話題に上がることが増えています。普段、家に飼い主さんがいて、強い愛情を受けている猫は、留守番をする頻度や時間によって強いストレスを感じることもあります。分離不安が疑われる場合は、猫とのコミュニケーションの取り方の見直しや、留守番のトレーニングの実施が有効です。
【コラム:フードボウルが気に入らない】
猫がフードを食べる時にヒゲがフードボウルの縁で絶えず刺激されると、それが猫にとって大きなストレスとなり、結果「食べない」という行動につながるという報道がされました。このストレス(=ヒゲ疲れ)についてしっかりとした研究が行われているわけではありませんが、次のような行動が見られる場合は猫がストレスを感じているのかもしれません。
・フードがたくさん盛られている時のみ食べる。
・お皿の中に手を入れてキャットフードを掻き出して食べる。
・お皿の縁にいつもキャットフードが残っている。
あまり深さのあるフードボウルだと、食べるときに器のふちにヒゲが触れてしまい、敬遠してしまうことがあります。浅くヒゲが当たらない器を選ぶようにしましょう。また、滑りにくく、ひっくり返ったりしない器が食べやすく、さらに体格に合わせてフードボウルの高さを変えてあげると、食事の快適さが向上します。清潔に保ってあげることはもちろんですが、食事の際にどんな様子かよく観察してみてましょう。
猫の「ヒゲ疲れ」に考慮したフードボウルなども販売されてますので、気になる場合は使ってみるもの良いかもしれません。
加齢が原因でご飯を食べない場合の対処方法
猫も人間と同様に、加齢による基礎代謝の低下によって1日に必要なカロリーが減少します。当然、食事量も減少していきます。
また、嗅覚や味覚も衰え、さらに常用薬の影響で食事の嗜好性が低下することもあります。口内環境の悪化も起こりやすくなりますので、食べやすい形状(小粒のものやウェットフードなど)への変更や、ドライフードをお湯やササミの茹で汁でふやかすなどして嗜好性と食感に変化をつけてあげると食いつきが変わることがあります。持病の有無に関わらず高齢猫の場合は定期的にかかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。
- 食べやすい形状(小粒・ウェットフード等)への変更
- ドライフードをお湯やササミの茹で汁に浸し嗜好性をあげる
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
老猫がご飯を食べない!高齢期の食欲不振の原因と対処方法
まとめ
本記事では、猫がご飯を食べない主な原因と対処方法を紹介しました。 若くて健康な猫の場合は、ご飯を食べないことがあっても、それほど不安視する必要はないでしょう。ただし、持病のある猫や高齢猫の場合は、普段から体調の変化を細かくチェックし、気になる変化があれば、早めにかかりつけの動物病院の受診をお勧めします。
やっぱり食べてくれない場合
健康にも問題がなく、色々対策を練ってみたけど、それでもご飯を食べてくれない。そんな時は当サービスにご相談ください。 アドバイザーが直接状況をお伺いいたしますので、次のことをあらかじめご確認ください。
- 猫種、年齢、性別、体重、去勢・避妊手術の有無、性格
- 使用しているフード名・おやつ
- 1日のフードの量と与え方
- フード以外に与えているものの有無(薬やサプリメント等)
- 使っている薬またはサプリメント等
- いつから(どんな状況で)食べなくなったか
- これまでに試したこと
- 獣医師の診断の有無
- 飼育環境(室内or屋外、冷暖房、留守番の時間など)