シニア期を迎えた犬は、基礎代謝や消化器系といった内臓機能の低下によって、自然に食事量が減少していきます。
加齢による食事量の減少自体は特に不安視する変化ではありませんが、ほとんどフードを食べない、まったく食べないといった状態が続く際には、注意が必要です。食欲不振は、さまざまな病気の初期症状としても生じます。ご飯を食べない状態が続く、普段と違う気になる様子が見られるといった場合は、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
今回は、高齢犬がご飯を食べなくなる原因と対処方法について説明します。
食欲不振と併せて普段と違う様子(嘔吐・下痢・元気がない・水も飲まない等)が見られる際には、緊急を要するケースも考えられます。動物病院の受診を強くお勧めします。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
犬がご飯を食べない!何日まで様子見?食欲不振の原因と対処方法
老犬がご飯を食べなくなる5つの原因
高齢犬の食欲不振の主な原因としては、以下の5つが考えられます。
- 消化機能や基礎代謝の低下
- 嗅覚や味覚の衰え
- 口内環境の悪化
- 環境の変化などのストレス
- 胃腸炎などの病気
病気が原因で食欲不振となった場合は、嘔吐や下痢、元気がないといった症状が同時に見られるケースが多くなります。ご飯を食べないだけでなく、気になる様子がある時は、早めに動物病院を受診することをお勧めします。
健康な老犬がご飯を食べない場合の対処方法
動物病院で異常は無いと診断されたものの、ご飯を食べない状態が続く場合に実践すべき対処方法をご紹介します。
フードの匂いを強めて嗜好性を高める
シニア期を迎えた犬は、嗅覚や味覚の衰えや常用薬の影響などで食事の嗜好性が低下するケースが見られます。これまで問題なく食べていたドッグフードを食べなくなった際には、フードの匂いを強める以下のような工夫を試してみましょう。
- ドライフードを人肌程度に温めて匂いを強める。
詳しくは次の記事を参考にしてください。
ドッグフードのにおいが原因?犬がご飯を食べない時は
- ドライフードをお湯やササミの茹で汁でふやかす。(嗜好性と同時に食感や消化もよくなる)
- 匂いの強いウェットフードをドライフードに混ぜる。(一般的にドライフードよりウェットフードの方が匂いが強く、食いつきが良い。また消化にも良い。)
また、犬は甘味を感じることができ、サツマイモやりんごなどの甘い食べ物をフードにトッピングすることで、食欲が増進する可能性もあります。 その際には、ぶどうなど犬が中毒を起こす可能性がある食材ではないことを慎重に確認しましょう。
以上のような方法で食事に工夫を施して、食欲が改善するかどうかを観察しましょう。
2,500件以上の愛犬・愛猫の食欲不振に関するご相談の声から生まれた「ふりかけ」 食欲を呼び覚ます鹿肉の「におい」
当サイト「ネイチャーライフ」には愛犬・愛猫がご飯を食べてくれないというご相談が、毎日のように寄せられています。その数は2,559件に上ります(2023年8月現在)。 ペットの食のプロである私たちは、毎日飼主様と悩みを共有する中で、愛犬や愛猫にストレスを与えることなく、食欲を改善する方法を追求してきました。そして「体によいもの」を毎日喜んで食べてもらえ、飼主様の負担にならない 手軽さというコンセプトを追求し、フードにトッピングする「太古の記憶 甦れ食欲!ふりかけタイプ」を開発しました。国内野生鹿を原料とし、特殊な乾燥技術を採用して旨味や風味を損なうことなく、商品化を実現。袋を開けた瞬間にふわりと香る鹿肉の匂いが、愛犬・愛猫の食欲を刺激します。
愛犬の好みのフードを探してみる
いろいろ試してみたけどやっぱり食べないということもあります。持病がなければ色々なフードにチャレンジし、愛犬の気に入るフードを探してみましょう。 ここでは高齢期の愛犬の体の変化から適切と思われるフードをいくつかご紹介します。(もちろん、ここで紹介するフードが全てではありません。)
犬の高齢期は、シニア初期とハイシニア期の2つのステージに分けられます
高齢期に入った犬の体は「シニア初期」と「ハイシニア期」の2つのステージを経て変化していきます。シニア初期は高齢期の始まりです。(大型犬なら5〜7歳 / 小型犬なら7〜10歳)シニア初期を迎えた犬は、運動量の減少によって太りやすくなるため、カロリーを抑えたフードが適しています。逆にさらに高齢となるハイシニア期を迎えると、消化機能の低下と食事量の減少によって痩せやすくなる傾向があります。体重減少が見られる場合は、消化しやすい高カロリーのハイシニア用ドッグフードに切り替えて、様子を見るようにしましょう。
犬の高齢期の2つのステージ
ステージ1(シニア初期)… 食事量の変化は少ないが活動量の低下から太りやすくなるため、低カロリーのドッグフードが適している。 すでに肥満傾向がある場合は、以下の記事を参考にして肥満対策を行いましょう。
愛犬の肥満対策!ダイエット方法のご紹介
ステージ2(ハイシニア期)… 体内外の変化が見られ、消化能力低下と食事量減少によって痩せやすくなるため、高カロリーで消化吸収しやすいフードが適している。
また、高齢犬に多い腎臓病を予防するため「たんぱく質」とミネラルの一種である「リン」の過剰摂取に注意しましょう。特に「リン」の過剰摂取は、腎臓病の進行を早める原因になります。腎臓病は症状が現れないまま進行してしまいます。よってシニア初期からは比較的「リン」「たんぱく質」の含有量が多くないフードを選択することも必要です。
シニア初期のおすすめフード
シニア初期(大型犬では5~7歳/小型犬では7~10歳)の犬は、活動量が減少するために、太りやすくなる傾向があります。 肥満はさまざまな病気のリスクを高める要因になるので、できるだけ適正な体重を維持するよう心がけましょう。
シニア初期用のドッグフードには、脂肪分やカロリーを抑えた配合のフードがあります。肥満傾向が見られる犬には、そうしたフードが適しています。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
愛犬の肥満対策!ダイエット方法のご紹介
また、愛犬の健康維持のためには、適量のたんぱく質を取ることが必要ですが、たんぱく質の過剰摂取は、腎臓に負担をかけてしまいます。
ペットフードの栄養基準を設定するAAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準では、ドラフードでのタンパク質の下限値を18%としており、この値を大きく上回るタンパク質は高齢犬の体の維持というよりはむしろ腎臓に負担をかけてしまう恐れがあります。
高齢犬のたんぱく質要求量は、維持期と比べて増加する傾向がありますが、成長期ほど多くはありません。目安としては18~24%が適量ではないかと考えられます。
また、リンの含有量が比較的少ないフードを選ぶことも重要です。AAFCOの栄養基準では、ドライフードのリンの含有量は、0.5〜1.6%の範囲内であれば適正とされています。リンの含有量が少ないものを選ぶ際には、下限値の0.5%に近いフードを選びましょう。
シニア初期を迎えた犬用に、たんぱく質やリンの配合量を調整したフードを、以下に紹介します。肥満傾向が見られる犬の場合は、低カロリーであることも重視して、フードを選定しましょう。
※パッケージ、成分等は予告なく変更される場合があります。カロリーは100gあたりの値です。
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パッケージ - メーカー/輸入販売元ロイヤルカナンハッピードッグ
- 商品名ミニ アダルト 8+ミニシニア(小型犬用)
- タンパク質25%23.5%
- 脂質14%11%
- リン0.61%0.65%
- カロリー397kcal367kcal
- 販売サイト
- コメントリンの量を下限値に収める一方、タンパク質は過不足なく摂取できる優秀なフード。リンの量を下限値に収める一方でタンパク質は過不足なく摂取できる優秀なフード。
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パッケージ - メーカー/輸入販売元日本ヒルズ・コルゲートFORZA10
- 商品名小型犬用 シニアライト 7歳以上 肥満傾向の高齢犬用 チキンデイリーフォルツァ ミディアム フィッシュ(中粒)
- タンパク質18.9%23%
- 脂質11.3%以下11%
- リン0.65%0.7%
- カロリー313kcal356kcal
- 販売サイト
- コメントリンの量を下限値に収め、同時にタンパク質量も低く抑えている。腎臓に最大限配慮した配合となっているが、使用年齢には気をつけたい。また肥満傾向にある犬に配慮した低カロリー食です。表示の成分値は水分除去後の値でパッケージに記載されている値と異なります。リンの量を下限値に収める一方でタンパク質は過不足なく摂取できる優秀なフード。
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パッケージ - メーカー/輸入販売元KMTプレイアーデン
- 商品名ソリッドゴールド ホリスティックブレンドロイヤルバランス
- タンパク質18%23%以上
- 脂質6%13%以上
- リン0.75%0.8%
- カロリー326.5kcal361kcal
- 販売サイト
- コメントリンの量を下限値に収め、同時にタンパク質量も低く抑えている。腎臓に最大限配慮しているが使用年齢には気をつけたい。低カロリーでダイエット利用も◯リンの量を下限値に収める一方でタンパク質は過不足なく摂取できる優秀なフード。
ハイシニア期に適したフード選びのポイント
ハイシニア期は大型犬で8歳〜、小型犬で11歳〜とされています。しかし個体差もありこの分け方が絶対ではありません。活動量と食事量が低下し、(消化能力の低下などで)体重減少が見られるようであればハイシニア期と考えてよいでしょう。(急にフードを食べなくなった場合は病院を受診することをおすすめします。)
太っていることは健康によくありませんが、痩せすぎもまた病気への抵抗力が低下するため不健康と考えられます。よって、ハイシニア期に適したフードは消化しやすく、高カロリー、高栄養(少量でも必要なカロリー、栄養を摂取できるよう)ということになります。
ハイシニア期に入り、活動量と食事量が低下し痩せすぎているようであれば子犬用(成長期)フードを与えるのも良い選択肢です。子犬用フードはその急激な成長を支えるため、高カロリー、高栄養なものが多く、ハイシニア期の老犬には少量でも十分なカロリーと栄養を摂取できるためです。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
子犬がご飯を食べない!離乳後の子犬の食欲不振
まとめ
本記事では、高齢犬がご飯を食べなくなる原因と、健康面で異常のない場合に有効な対処方法、おすすめのドッグフードなどについて説明しました。
持病などのない健康なシニア期の犬であれば、食事に工夫を施すことで、食欲の回復が期待できます。食欲不振だけでなく、普段と違う変化や症状がある際は、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。