腎臓に疾患を持つ犬は、通常のドッグフードではなく腎臓疾患の緩和や進行を遅らせるために療法食へ切り替える必要があります。
しかし、食べ慣れたドッグフードとは異なる匂いである療法食は食いつきが悪くなるケースも少なくありません。そこで、腎臓ケア療法食を食べてもらうためのコツ、さらに療法食を変更する場合に見るべきポイントなどを紹介していきたいと思います。
慢性腎臓病は進行の度合いにより食欲がまったくなくなる、激しい嘔吐を繰り返す等の症状がでる場合があります。
体から排出されるはずの老廃物、毒素が溜まり尿毒症を発症している危険性があります。この場合、かかりつけ獣医師にご相談されることを強くお勧め致します。
療法食を与える際の工夫と注意点
まず、通常のドッグフードから腎臓ケア療法食に切り替える場合に注意して欲しい点をご紹介します。
切り替える際は突然新しい療法食に切り替えるのではなく、これまで与えていたドッグフードに少しずつ混ぜながら切り替える方法が有効です。初日は1割程度、次の日には2割程度といった方法で徐々に療法食の割合を増やし、1週間~10日程度の時間をかけて切り替え、様子を見ましょう。
また、愛犬が感じる暑さ・寒さによっても食いつきが悪くなる可能性があるため、適切に冷・暖房を使って適温になるよう調整することや散歩の時間帯なども意識した方が良いでしょう。
上手な療法食への切替方法
これまで与えていたドッグフードに少しずつ療法食を混ぜながら切り替える方法が有効です。
初日は1割程度、次の日には2割程度といった方法で徐々に療法食の割合を増やし、1週間~10日程度の時間をかけて切り替えていきましょう。
療法食を食べてくれないときの対処法
犬が特定のフードを食べるかどうかは、匂いや舌ざわり、噛みごたえ、味、温度など様々な条件で食いつきが異なります。
療法食を食べない場合、まずは匂いを強くしてみることをお勧めします。フードは温めたりぬるま湯でふやかすことにより匂いを強くすることができ、食いつきが変化する可能性があります。
通常のドッグフードの切り替えとは異なり、療法食に切り替える場合は、ふりかけやおやつなどを混ぜられないためその点は注意が必要です。
次の記事も参考にしてみてください。
ドッグフードのにおいが原因?犬がご飯を食べない時は
腎臓ケア療法食の特徴と種類
少しずつ割合を増やしてフードを切り替えるなど、工夫をしても犬が療法食を食べてくれない場合もあります。この場合は療法食自体の変更を担当の獣医さんに相談してみましょう。
腎臓ケア療法食はいくつかのメーカーから発売されているため、愛犬の嗜好に合う療法食を探してみてください。
次は腎臓ケア療法食の特徴や療法食の見るべきポイントをご紹介していきます。
腎臓ケア療法食の役割と見るべきポイント
腎臓病は腎臓機能が低下することによって、体内から老廃物を排出することが難しくなり、老廃物の中に含まれている毒素が溜まり全身に負担がかかるようになります。腎臓ケア療法食は老廃物の元となる栄養素を調整することで極力老廃物を発生させないよう設計されたフードです。よって、腎臓の負担を軽減する効果が期待できるのです。
それでは療法食を選ぶ際注目していただきたいポイントをご紹介します。
腎臓ケア療法食は腎臓の負担を減らすためリン、ナトリウム、(場合によりタンパク質)を制限しています。 特にリンは腎臓機能に負担をかけ悪化させる原因となることが知られており、リンを制限した食事を与えた場合、3倍長生きしたというデータをペットフードメーカーが公表しています。
よって、腎臓ケアフードの見るべきポイントは以下の3つです。
- リンの量
- ナトリウムの量
- タンパク質の量
まず、よく処方される次のメーカーの療法食をベースに見ていきましょう。
リン、ナトリウム、タンパク質の部分を赤字にしてあります。
(療法食は特定の疾患の治癒ではなくコントロールを目的として作られたペットフードであり薬ではありません。)
まず、リンの量に着目しましょう。
ペットフードの栄養基準を設定するAAFCO(米国飼料検査官協会)では健康な成犬に推奨されるリンの量を0.5~1.6%(ドライフードベーズ)としています。リンは骨や歯、細胞を作るために体にとって大切な栄養素でもあるため摂取をゼロにすることはできません。基準値を満たさない量であるのは腎臓に最大限配慮した処方であるためです。
次にナトリウムの量を確認しましょう。
AAFCO基準ではナトリウムの量は0.08%以上(ドライフードベース)となっています。 下限値ではないものの一般食と比べるとやはり配合量は制限されています。
最後にタンパク質量です。
同様にAAFCO基準では18%以上(ドライフードベース)となっています。
タンパク質は分解されることで腎臓に負担をかける老廃物が生じるため、病気の進行度合いにより制限されます。一方で体を作る大切な栄養素でもあるためゼロにすることはできません。基準値を満たさない量であるのは腎臓に最大限配慮した処方であるためです。
次に療法食メーカー各社のフードを比較していきましょう。
腎臓ケア療法食の比較
腎臓ケア療法食は、タンパク質を調整し、リンとカルシウムをバランス良く配合しています。リンやタンパク質の量が調整されているものであれば、慢性的な腎臓病の愛犬にも安心して与えられるでしょう。基本的には塩分も抑えられているため、シニア犬など心臓機能に不安がある場合でも食べられます。ただし、療法食は病気を治す目的ではなく、進行を遅らせたり症状を緩和させたりする目的のペットフードであることを認識しておくことも大切です。
ここでは獣医療の先進地域であるヨーロッパの療法食を中心にピックアップしています。また、紹介順はリンの量が少ないものから挙げています。(パッケージ、成分等は予告なく変更される場合があります。)
フードを変更する場合は成分カタログを持ってかかりつけの獣医師にご相談ください。
療法食を変更される際はメーカーHPやカタログなど、成分がわかるものをかかりつけの獣医師に提示してご相談ください。
ドライタイプの療法食
ウェットタイプの療法食
一般的なドッグフードと同様に、療法食にはウエットタイプが存在します。ドライフードと比較するとリンの量が少ないと感じるものの、愛犬の体重ごとに食べなければならない量が決められているため、結果としてドライフードと同様の摂取量になることを認識しておきましょう。
腎臓ケア療法食の選び方
腎臓ケア療法食のなかには、ドライタイプとウェットタイプが存在します。それぞれ特徴が異なるため、メリットとデメリットを見ていきましょう。
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メリットデメリット
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ドライタイプ少しの量でも十分な栄養素とエネルギーを摂取することが可能ウェットタイプと比較すると嗜好性が若干劣る可能性がある
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メリットデメリット
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ウェットタイプドライタイプと比べると嗜好性が高い。食事をすると同時に自然と水分も補給できるフードの7-8割程度が水分でできているため、1日に必要な栄養素やエネルギーを十分に摂取するためには食べる量を増やす必要がある
愛犬に食欲がないのであれば、ウェットフードだけでは必要な栄養素を摂取できない場合もあります。さらに、ドライフードを与える際には、正しく水分補給をさせなければなりません。日中は仕事で外出しているなど、飼い主が1日に食事を与えられる回数が少ないのであればドライフード、こまめに与えられるのであればウェットタイプなど、愛犬の嗜好・体格に加えて飼い主のライフスタイルに適したものを選択するといった方法も有効です。
食事の与え方や療法食選びに迷ったり、悩んだりした場合にはお気軽にご相談下さい。
犬の腎臓病(慢性腎不全・腎疾患)の症状
腎臓病は判断が難しい疾患ですが、以下のいずれかの症状が見られる場合には腎臓機能にトラブルが起こっている場合があります。次の症状のいずれかがみられる場合には、獣医師に相談しましょう。
- たくさん水を飲む
- おしっこの量が多い
- 食欲がない
- 体重が減っている
- 口臭が気になる
- 力が抜けたようになっている
- 下痢や嘔吐
腎臓病と診断されると、獣医師から急性もしくは慢性のどちらであるかを説明されることが一般的です。急性腎臓病の場合は以下が原因で起こる可能性があります。
- 外傷
- 脱水
- 薬物
- 尿路閉鎖
- 感染症
一方、慢性腎臓病の場合は急性腎臓病の要因に加えて、犬種ごとの特徴や遺伝的要素も含まれます。
慢性腎不全の治療
病気の進行を遅らせ、症状を和らげることが治療の目的となります。
また食事療法では、リン、ナトリウム、(場合によりタンパク質)を制限した療法食が用いられます。
特にリンは腎臓機能に負担をかけ悪化させる原因となることが知られており、リンを制限した食事を与えた場合、3倍長生きしたというデータをペットフードメーカーが公表しています。
慢性腎臓病と食事療法
慢性腎臓病は進行性であり、悪化した腎臓が元に戻ることはありません。そのため、どれだけ進行を遅らせられるかが重要となります。慢性腎臓病の初期段階であれば、腎臓への負担を軽減させる食事療法が主な治療となります。さらに、水分補給も大切であるため、いつでも水を飲める状態を作ることも大切です。